千葉の房総へ日帰り旅行をやってみた

千葉の房総は、東京よりも早く季節が訪れるといわれています。私が日帰り旅行をした4月は、明るい日差しの下、色とりどりの花々が迎えてくれました。なかでも房総半島の南端に位置する館山市は、温暖な気候に恵まれていることから旅行客の人気を集めています。

今回は花々に加え、夕陽の絶景も堪能できた私の旅行記を紹介します。

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千代田区在中の私は、まず東京駅から総武線に乗車し、千葉駅で内房総線に乗り換え、最初に館山駅を目指すことにしました。内房線の木更津から館山の間では、車窓から東京湾の美しい景色を楽しむことができました。かつては「さざなみ」という特急列車が東京と館山の間を結んでいたのですが、数年前のダイヤ改正で、海が見える前の君津止まりになってしまったそうです。

その結果、東京駅から館山駅まで3時間もかかってしまいましたが、この美しい景色を車窓からのんびり眺めるには、特急列車で駆け抜けるよりも、各駅停車のほうがふさわしいと感じました。

館山駅に着いた私は、郊外にある館山ファミリーパークを目指しました。洲崎(すのさき)灯台、平砂浦(へいさいうら)海岸などを経て南房総市に至る海沿いのルートは「房総フラワーライン」と呼ばれていて、なかでも相浜と伊戸の間は「日本の道100選」に認定されているそうです。

私が日帰り旅行をした4月は、かれんな菜の花が沿道を黄色く染めるように咲き誇っていて、その絶景はまるで旅行客を歓迎してくれているようでした。館山ファミリーパークは相浜と伊戸の途中にありました。園内に入ると、なんとそこには見渡す限りのポピーの花畑が広がっていたのです。

オレンジと黄色に白色の花弁が混ざることで、絶妙なコントラストを演出していました。この約100万本を誇るポピーは、ゴールデンウイークまでが見ごろとのことです。そして、7月から8月の夏休みシーズンになると、今度はヒマワリが主役となるそうです。

館山ファミリーパークで花の楽園を十分に散策したあとは、園内にあるカフェでドラゴンフルーツのスムージーを味わいました。このカフェで使用されているフルーツは、温室で栽培されたものだそうです。鮮やかな赤紫色の見た目に反して、味は優しい温室栽培の甘みが感じられ、とてもまろやかでした。

ちなみに、夏になると果実の購入が可能になるそうです。

館山ファミリーパークの後は、館山駅に戻り、バスで大福寺に向かいました。大福寺の観音堂が船形山(せんぎょうさん)の壁面に張りついているように見えることから、通称は「崖観音(がけかんのん)」です。本堂の正面から観音堂を見上げると、崖観音という通称がぴったりであることを実感しました。

堂内に安置されている磨崖仏(まがいぶつ)の十一面観世音菩薩は、717(養老元)年に行基が海の安全と豊漁を祈念して彫刻したものだそうです。観音堂から望む館山湾の眺望は壮観でした。行基の功徳なのでしょうか?館山湾は「鏡ケ浦」という別名通りに、静かに輝いていました。

大福寺の後は、バスルートを引き返して、那古寺(なごじ)にも寄ってみました。こちらにも行基ゆかりの千手観音をはじめ、数々の文化財がありました。地元では「那古観音」と呼ばれ、住民の信仰を集めているそうです。

帰路は電車を選び、那古観音と崖観音の間にある那古船形駅で降りました。駅構内の渡線橋から、ひとつ先の館山駅方面に目を向けると、左手に那古観音、右手に崖観音という美景が望めます。そして、館山の街を見下ろすシンボルである館山城がそびえる城山公園まで歩きました。

城山といっても、きつい山道はなく、駅から30分ほどのちょっとした散策コースなのです。城山は、戦国武将の里見義康と忠義が1590(天正18)年から25年間を過ごした居城跡です。

居城前からこの地で権勢をふるってきた里見氏ですが、領地があまりに江戸城に近かったことが災いしました。

忠義は鳥取県倉吉市にある伯耆国(ほうきのくに)転封され、里見家は断絶し、館山城も取り壊されたのです。

こうした里見氏の興亡史は、山麓にある市立博物館で詳しく紹介されていました。現在の館山城は、1982(昭和57)年に再建されたものです。内部は「八犬伝博物館」になっていて、滝沢馬琴の名作『南総里見八犬伝』関連の資料を見学することができました。

館山城の天守閣からのパノラマを楽しんだ後は、駅から近い北条海岸へ急ぎました。日没の時刻が近付くと、旅行客がぞくぞくと集まって来ます。お目当ては「日本の夕陽百選」にも選ばれているサンセット風景です。私が旅行した日は、残念ながら富士山がかすんでいましたが、水平線のかなたに太陽が沈んでいくと、ポピーの花弁のような淡いオレンジ色の空が広がり、昼間とは違った表情を見せてくれました。

ちなみに、5月中旬と7月下旬の各2日間ほどではありますが、気象条件によっては富士山の頂きに太陽が重なる神々しい自然現象である「ダイヤモンド富士」との邂逅に恵まれることもあるそうです。